ANAは2019年春より、ハワイ・ホノルル路線に総2階建ての巨大飛行機、A380を導入します。機体デザインはハワイで神聖な生き物とされるウミガメをモチーフとし、愛称は「空飛ぶウミガメ」という意味の「FLYNG HONU」に決定されました。
ANAのA380の機内はどのようになるのか、ANAを含めたハワイ路線の動向など気になることがいっぱいです。
ANAが導入するエアバスA380型機とは
ANAは2016年1月29日に発表した中期経営計画で、エアバスA380型機を3機導入することを決定しました。さて、そのA380型機とはどのような航空機なんでしょうか?
世界最大の航空機A380
欧州エアバス社が生産するA380は総2階建て、すべてをエコノミーシートに設定した場合、最大定員が853席になるという巨大航空機。2007年にローンチカスタマー(最初の発注航空会社)であるシンガポール航空に引き渡され、シンガポール-シドニー間で初の商業運航を行いました。
その後、現在A380を最も多く所有する航空会社であるエミレーツ航空(UAE)を始め、カンタス航空(オーストラリア)、エールフランス航空(フランス)、ルフトハンザ・ドイツ航空(ドイツ)、ブリティッシュ・エアウェイズ(イギリス)、大韓航空(韓国)、アシアナ航空(韓国)、中国南方航空(中国)、マレーシア航空(マレーシア)、タイ国際航空(タイ)、カタール航空(カタール)、エティハド航空(UAE)の全13社で運航中です。
この他には、ヴァージン・アトランティック航空(イギリス)やトランスアエロ航空(ロシア)が発注、受け渡し待ちの状態です。
2015年まではANA、JALともにこのA380は発注しておらず、外国の航空会社が運航するA380が日本に就航する他には、日本で目にすることは無い航空機でした。
一方、マレーシア航空では経営の悪化に伴い、A380を放出する可能性が示唆されており、必ずしも順調に運航できる(コスト面で)航空機ではありません。
A380は就航できる空港に制限が
A380はその巨大な機体のため、就航できる空港が限られています。
全長こそ72.3メートルと、同じエアバス社のA340-600の75.3メートルや、ボーイング社の777-300の73.9メートルに及びませんが、主翼の端から端までの長さが79.8メートルもあり、飛行機が空港で駐機するスポットの間が十分に無いと、隣の飛行機に接触してしまいます。
幅広な飛行機です
ところで、巨大なA380は離着陸にもかなりの距離が必要かと思われがちですが、羽田空港や成田国際空港にある2,500メートルの滑走路でも問題なく離着陸することが可能であり、離着陸能力に優れた面もあります。
日本では成田空港と関西空港にA380が就航しています。羽田空港ではその巨大な機体が作る後方の渦のせいで、飛行機の離着陸間隔を開ける必要があるため、6時から23時までの就航制限があり、現在就航しているA380はありません。
ちなみに羽田空港では、A380への対応として107番スポットにアッパーデッキ(2階)用のPassenger Boarding Bridge(搭乗橋:ターミナルから歩いて飛行機に乗るための通路)が設置されています。
ANAがハワイ路線にA380を導入する理由
リゾート路線を拡大する
ANAが発表した中期5か年計画では、中南米やアジアの空白地帯への路線展開を図ると目標が掲げられています。
具体的には2016年中にプノンペン、メキシコシティへ新規就航し、子会社LCC(格安航空会社)であるバニラエアによるANA未就航地やリゾートなど、日本発のプレジャー(pleasure;楽しみ)路線への展開を行うとしています。
⇒ANAマイルでアンコールワットへ?ANA・成田-プノンペン線を開設
ANA本体によるプレジャー路線強化も目標とされており、その一環としてハワイ路線の強化が行われるわけです。
ハワイ路線に弱いANA
日本人がリゾート地と言われてまず思い浮かべるのはハワイでしょう。しかしリゾート=ハワイというキャンペーンを展開したのはJAL。ハワイ路線ではJALが圧倒的に強いのです。
実際、JALは東京、中部、関西からハワイへ毎日6便就航しているのに対して、ANAは東京からの3便のみ。ハワイ路線に占めるANAの座席供給数は10%程度です。さらにここ数年はハワイを本拠地とするハワイアン航空の攻勢が著しく、ハワイ路線の半分近くをハワイアン航空が占めるほどになっています。
ここにA380という巨大機を就航させ、座席供給数を増やす(ハワイ線のシェアを拡大する)とともに、機内サービスの充実を図ることで(A380は巨大な飛行機なので、シャワー室を設置している会社もある)新しい顧客を獲得しよう、という目論見です。
ただし、ハワイ路線のみならず、リゾート路線全般に弱い、というのがANAに対する評価です。あくまでのANAの経営戦略によるものですが、リゾート路線でエコノミークラスの乗客ばかり運ぶより、ビジネス路線でビジネスクラスを利用してくれる乗客を運ぶ方が儲かる、というもの。ですからグアム路線には就航すらしていません。
恐らく今後もANA本体はリゾート路線へ就航することはなく、子会社LCCのバニラエアがグアムなどへ就航していくと思われます。
A380の座席を埋めるだけの需要
A380はエコノミークラス単独なら最大で853席、4クラス制(ファースト、ビジネス、プレミアムエコノミー、エコノミー)でも544席を装備することができます。ANAの787は最大240席、777-200ERは最大306席ですから、1機当たり200席以上座席供給数が増加します。
これだけの需要を埋めることができる路線、それはハワイ線以外には考えられない、というのがANAの予測です。またハワイ路線はマイルで特典航空券予約が難しい路線とされています。それだけハワイは人気のある渡航先なのですが、その需要に応えるだけの座席供給がされていなかったのが原因です。A380の導入により、特典航空券座席数が増えれば私たち陸マイラーもハッピーです。
ANAでは今後、A380就航によりハワイ線の運賃は低下すると予測しています。運賃低下はANAにとっても”首を絞める”ことにつながります。A380の座席を埋めることができるのか、運賃低下による収益の悪化に対処できるのか、ANA自身への課題でもあります。
ANAがA380を購入する本当の理由
これはいろいろと言われていますが、スカイマーク破たん後の支援決定時の見返りと考えられています。
スカイマークはJAL、ANAに続く第3極の航空会社として注目されていましたが、A380の購入を決定したのち、収益が悪化。そのキャンセル時に生じた巨額の違約金が負担となり破たんしました。
そのスカイマーク支援に乗り出したANAにとって、大口債権者であるエアバスとの関係をよくするために、A380の購入を裏で約束していた、ということのようです。
ANAのA380型機「FLYING HONU」
空飛ぶウミガメ「FLYING HONU」。2018年4月にその機体デザイン、機内装備などが発表されました。ANAが導入するA380型機の機体番号(レジ)は「JA381A」「JA382A」「JA383A」を使用。最初に導入される「JA381A」は2019年3月の納入が予定されています。
ANAのA380型機「FLYING HONU」はかわいいデザイン
ANAのA380型機は、3機それぞれに色が異なるデザインを導入します。今から乗るのはどの色のウミガメなのか、ワクワクしながら空港へ向かえます。
よく見ると、目の部分のデザインが違うんですよ。青と緑は男の子、オレンジは女の子みたいです。ミニーマウスみたいん、まつげクリン、です。
ANAのA380型機「FLYING HONU」はファーストクラスを含む4クラス、520席仕様
ANAはハワイ路線で初めのファーストクラスを、A380に導入します。「FLYING HONU」には、ファーストクラス8席、ビジネスクラス56席、プレミアムエコノミー73席、エコノミークラス383席の合計520席が設置されます。
バーカウンターではいつでも軽食やドリンクが自由に取れるようです。悪く言うとセルフサービス。飲み物をください、何か食べるものはありませんか?と言った要望をすべて聞いていると、CAさんがパンクしてしまうからでしょう。なんせ満席だと、520人乗っているんですから。
機内は2階席にファーストクラス、ビジネスクラス、プレミアムエコノミーが、1階席にエコノミークラスが設置されます。エコノミークラスはまさに詰め込み状態ですね。乗客の乗り降りにものすごく時間がかかってしまうことが想定されます。特にハワイからの帰路便では、みなさんお土産を両手に抱えて乗ってくるわけですから、想像するだけで怖くなります。
是非ともマイルを貯めてビジネスクラス、可能ならファーストクラスに乗って帰りたいですね。特典航空券に何席開放されるんでしょうか、非常に気になります。
ファーストクラス
ANAのA380型機「FLYING HONU」に導入されるファーストクラスは新しいプロダクトとのことですが、パッと見た第一印象は、既存のB777型機に導入されているファーストクラスシートに似ているなー、でした。
箱型で1列に4席ですが、ドア付きの個室型シートで、ディスプレイは32インチワイドスクリーン。ジャケットが収納できるクローゼットや小物入れが充実しているとのことです。
ビジネスクラス
ANAのA380型機「FLYING HONU」のビジネスクラスシートは、こちらもオリジナルプロダクト。こちらも既存のANA BUSINESS STAGGEREDシートに似ています。ただ、既存のシートがANAのコーポレートカラー、ブルーであるのに対して、「FLYING HONU」ではグレーを採用。機内が暗くない?と思ってしまいます。
全席通路にダイレクトアクセス可能で、フルフラットシートになる点はANA BUSINESS STAGGEREDシートと同じ。異なるのは、一部の中央2席で2席並んだペアシートとなっている点です。これはハワイ路線はカップルや家族利用が多いための仕様ですね。
プレミアムエコノミー
ANAのA380型機「FLYING HONU」のプレミアムエコノミーはやっぱりグレー。どうして明るいハワイへ行くのにグレーをチョイスしたのか?機内からキラキラしていたら疲れるからでしょうか?
シートピッチは38インチと既存のプレミアムエコノミーシートと同じ。大型テーブルやフットレスト、レッグレストも装備されています。
エコノミークラス
ANAのA380型機「FLYING HONU」のエコノミークラスは3-4-3の横10列、いわゆる詰め込み型です。国内線仕様のB777-200型機も3-4-3の10列シートですが、777-200型機の室内幅は5.86m、A380型機の1階は最大6.58mとのことなので、約80cm広くなります。つまり国内線シートよりも詰め込み度は下がるということですね。
ちなみに2階は最大5.92mで、1階よりも幅は狭くなります。
エコノミークラスの最後方6列は、カウチシート「ANA COUCHii」。カウチシートはニュージーランド航空に導入されていますが、レッグレストを上げると座面とフラットになり、横になってゴロゴロ過ごすことができるシートです。
小さい子供を連れているときにやたらと動き回りたがったり、ゴロゴロしたがったりすることがありますが、カウチシートなら足元に落っこちることなく、ハイハイもできます。家族3人で横になって過ごすには幅がちょっと厳しそうですが、家族連れには追加料金を支払っても乗る価値がありそうです。
ANAのA380型機「FLYING HONU」に乗るならどの席がおすすめ?
同じシートでも位置によって快適度が変わることがあります。特に非常口席は足元広々、が有名ですね。ANAのA380「FLYING HONU」ではどのシートに座るのが最適なのでしょうか?
ファーストクラス
あ、どこでも快適だと思います。検討する必要なし。
ビジネスクラス
カップルや家族連れなら中央2席のペアシートがおすすめ。窓は見えないけど、会話ができるというのは大きな利点です。
ひとりでこもりたい、という方には窓側列の窓側席がおすすめ。窓側席の通路側席は、横を通るCAさんや他の乗客がどうしても気になるんですよね。窓も遠いし。
ビジネスクラスの前後どちらを選ぶかはお好みでどうぞ。窓からの眺めはどうしても翼が大きく占められることになりそうです。
プレミアムエコノミー
プレミアムエコノミー最前列(2列が相当)は、足元が広々しています。ただし、せっかくの大型スクリーン(15.6インチ)が最前列では11.6インチに大幅サイズダウンになるのがマイナス。画面の大きさなんて気にしない、という方にはおすすめです。
エコノミークラス
エコノミークラスも最前列(4列が相当)は、足元広々。ただしプレエコと同じく、スクリーンが13.3インチから11.6インチにサイズダウンしてしまいます。また後方にある非常口席は、後ろ側がカウチシートになっているので小さな子どもが多くて、騒がしい可能性があります。子どもの声が嫌いな方は前方を選択するのがベターかも。もちろん、前の方にも子どもさんは乗っているかもしれませんが。どうしてもイヤな方はファーストクラスへどうぞ。ハワイ旅行なんですから、子どものテンション上がって騒がしいのは仕方ありません。
ANAのA380型機「FLYING HONU」トイレ問題は起きうるのか?
ANAのA380型機「FLYING HONU」にはトイレ問題が生じる可能性があるかもと思い計算してみました。
ファーストクラスは8席に対して2か所のトイレがあります。これは問題なし。
ビジネスクラスは56席に対してトイレが4か所。トイレ1つ当たり16人です。シンガポール航空のA380型機(2階がすべてビジネスクラスの仕様)では、ビジネスクラス86席にトイレが6つ。トイレ1つ当たり14.3人です。これはまだ耐えられるかと。
問題はプレミアムエコノミー、エコノミーです。
プレミアムエコノミーは2階にありますが、使用できるトイレは後方に1つだけ。必然的に1階にあるエコノミークラスのトイレは流れ込む可能性があります。前方のビジネスクラスのトイレへの流れはブロックされるでしょうからね。
エコノミークラスは1階に383席、トイレは10か所。プレミアムエコノミーと合わせて456席に11か所のトイレなので、トイレ1つあたりは41.5人。
シンガポール航空のA380型機はどうでしょうか?プレミアムエコノミーとエコノミー合わせて281席にトイレは7か所あります。トイレ1つ当たりで計算すると40.1人。意外と変わりませんでした。
ただしエコノミークラスでの、食後のトイレの列は日常風景なので、早めに用事を済ませることをおすすめします。
ANAマイルを利用してファーストクラスでハワイへ
ANAマイルでハワイへ行こう!
マイラーですから、ANAマイルを利用してファーストクラスでハワイへ行ってみたいと思います。必要マイル数はZONEによって決まります。ハワイはZONE5に属します。
ハワイへは現状、ファーストクラスの設定がありません。そこで必要マイル数が比較的似ているZONE4(アジア2)を参考に、必要マイル数を予想してみました。
ファーストクラスですから、特典航空券に開放される座席は通常1席か2席になります。人気のハワイ路線ですから、相当激しい競争が予想されます。予約開始時刻になったとたん、マイルで取れる空席が無くなる、なんてことは普通にありそうです。
マイルでハワイまでファーストクラスで行くことができるでしょうか?マイルを貯めるとともに、より特典航空券予約が取りやすい上級会員(ANAマイレージクラブ・ダイヤモンド会員など)になっておく必要があるかもしれません。
ファーストクラスのシートはシンガポール航空のように独自のものになると、1席で高級外車が購入できるほどなんだそうです。ビジネスクラスでもプリウスが購入できるほどかかるのだとか。搭乗するチャンスがあっても、丁寧に使用してくださいね。
JALファーストクラスでハワイへ行けるのか?
ところでANAの永遠のライバル、JALのファーストクラスでハワイへ行けるのでしょうか?
以前はボーイング747型機(通称ジャンボジェット)がハワイへ就航していたため、ファーストクラスでハワイへ行くことができました。しかし現在はジャンボ機は全機退役しており、JALファーストクラスでハワイへ行くことはできません。ここにANAがファーストクラスでの運航を開始すれば、JALに対するアドバンテージが生まれます。
JALもハワイ路線を死守!ハワイアン航空と提携開始
2004年ごろは日本ハワイ路線に占める提供座席の割合が半分近くあったJALですが、近年はANAの攻勢、ハワイアン航空の就航などにより3割程度に低下しています。ANAがA380を就航させればさらに低下することは必至。
JALも国際線の牙城であるハワイ路線強化に動いています。
機材の改修によりプレミアムエコノミーを設定するほか、ビジネスクラスシートもフルフラットシートに。さらに成田、中部、関西と結ぶ路線に資生堂パーラーと提携した機内食を提供するなど、顧客獲得にあの手この手を打っています。
そして2018年3月より、ハワイを拠点とするハワイアン航空との提携を発表。ANAと提携関係にあったハワイアン航空ですが、なかなかこっち(ハワイアン航空の方)を向いてくれないANAとは手を切り、JALを新たなパートナーに選びました。ハワイ路線では強者同士の連合。ANAには厳しい展開になりそうです。
ハワイにファーストクラスで行ける航空会社は?
JALにはファーストクラスの設定がなく、ANAもA380就航はまだ少し先。ではハワイまでファーストクラスで行ける航空会社はどこでしょうか?
2016年3月現在、ハワイへファーストクラスで行ける航空会社はユナイテッド航空です。成田-ホノルル間をファーストクラスが設定されたボーイング777型機で運航しています。
ユナイテッド航空はスターアライアンスメンバーであり、ANAマイルで予約することも可能です。必要なマイルは120,000マイルです。ただユナイテッド航空の機内サービスは ”アレ” という評判であり、12万マイル使って搭乗するかと言われると微妙かもしれません。
まとめ
ANAは総2階建ての航空機A380を導入し、東京成田-ホノルル線に就航させます。A380には特別塗装が施され、ウミガメジェットになります。
ハワイ線はA380導入によって、航空会社間の競争がますます激しくなると予想されます。
ANAのA380にはファーストクラスが設置されます。ファーストクラス特典航空券は熾烈な争奪戦が繰り広げられることでしょう。
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