JALは2017年度の路線便数計画を発表しました。国土交通省による通称8・10ペーパーの期限が切れる今年4月以降、新たな路線を広げるのか注目されましたが、ふたを開けると堅実な計画でした。
(追記)2017年5月29日2017年度路線便数計画の修正が発表されました。
JAL 2017年度 路線便数計画
航空会社は毎年、次年度の路線、便数の計画を発表します。こんどこの路線に就航するからよろしくね、という宣伝の意味もありますし、顧客や株主に対するお知らせとしても必要です。
JALは経営破たん後に、国の補助や税金の軽減といった政策もあって息を吹き返した経緯があり、ANAとの競争をゆがめかねないという観点から、国土交通省は通称「8・10ペーパー」と呼ばれる新規路線就航を禁止する通達を出していました。その期限が切れるのが2017年3月末。4月からは自由競争の名のもと、新たな路線を開拓することが許可されます(されるはず)。
この環境の変化から、2017年度の路線便数計画では、どのような計画が盛り込まれるのか注目でしたが、意外に堅実路線を行くようです。
JAL 2017年度新規就航路線と増便機材変更
羽田-ニューヨーク線に新規就航
2017年度に新規就航するのは、羽田-ニューヨーク線です。ニューヨークなら成田から飛ばしてるけど?と思いますが、成田と羽田では違う路線とされるようです。
運航開始は2017年4月1日から。機材は777-300ER(SS7)の超主力機材(SSは最新機材にに付けられる名称です)。ファーストクラス装備です。運航スケジュールは以下。
JL006 羽田 10:40 → ニューヨーク 10:35
JL005 ニューヨーク 13:10 → 羽田 16:25(翌日)
このあおりを受けて、成田ーニューヨーク線は週14便(1日2便)から週7便(1日1便)に減便されます。そのかわり、機材は787-8(SS8)から777-300ER(SS7)へ大型化。こちらもファーストクラスが設定されます。
羽田空港からアメリカ合衆国への便は、羽田空港の発着枠の関係で飛ばせる便数が限られています。さきほどの8・10ペーパーではありませんが、ANAとのバランスを取る意味でANAにより多くの発着枠が分配されたため、JALは羽田空港からアメリカ合衆国へは1日2便しか飛ばせない状況。羽田-ニューヨーク運航開始とともに、羽田-ホノルル便は運休します。
777-300ERに関する機材変更
ところで羽田-ニューヨーク間を飛ぶ777-300ERはどこからねん出されたのでしょうか?機材変更のあった成田-ジャカルタ線からねん出されたのかなと思ったのですが、
予想は的中。成田-ジャカルタ線は777-300ER(SS7) と787-8(SS8)による運航でしたが、767-300ER(SS6) と787-9(SS9)による運航に変わります。
また成田-シドニー線も 777-300ER(SS7) から787-9(SS9)へ機材変更。これで羽田-ニューヨーク線の 777-300ER(SS7)がねん出されました。残念ながら、ジャカルタ、シドニー線のファーストクラスサービスは休止となります。
成田-ホノルル線は増便
羽田から追われたホノルル線は成田発になり、成田-ホノルル線は週28便(1日4便)、さらに夏季繁忙期は週35便(1日5便)まで増便されます。かつては747-400が飛び交っていたホノルル線ですから、週4便飛ばすだけの需要があるんですね。
ハワイアン航空が攻勢を強めており、ANAもA380を就航させる計画がある中、JALとしても牙城の(リゾッチャなどのキャンペーンを昔から開催していました)ホノルル線を死守する構えです。8月4日から15日のお盆期間は777-300ER(SS7)を運航させ、ホノルル線にファーストクラスを設定しちゃいます。年末年始に続いての対応です。
関西-ホノルル線も増便
関西在住の方にもよいニュース。成田や羽田ばかりではなく、関西空港からもホノルル線が増便されます。
現在週7便(1日1便)の運航ですが、これを週14便(1日2便)に増便。機材もSS8の787-8が使用される計画があり、フルフラットのビジネスクラスでハワイへ行くことができます。増便されるのは以下のスケジュール。
JL8792 関西 19:05 (7~9月は18:20発、10月は18:40発)
- ホノルル 07:50 (7~10月は07:25着)
JL8791 ホノルル 10:25 (7~9月は10:20発)
- 関西 14:45(翌日) (7~9月は14:10着)
関西発便はユナイテッド航空にまかせっきりのANAに比べると、関西発便を増便までしちゃうJALの肩をどうしても持ちたくなっちゃうのは、関西在住者として致し方ないところ?
倒産しちゃったのは仕方ない(というか放漫経営のつけだからJALの責任)として、その後もお上(国交省)にいじめられちゃうJALをついついひいき目に見ちゃったりして。
JALがオーストラリア・メルボルン、ハワイ島コナに新規路線開設
2017年5月29日、JALから2017年度の新規路線便数計画に一部修正を行うと発表がありました。
2017年9月1日より、成田-メルボルン(オーストラリア)線を新規開設予定。既存の成田ーシドニー線や他社(カンタス航空やキャセイパシフィック航空)との連携を含め、オーストラリア路線を拡大します。さらに2017年9月15日からはハワイ島コナ線も開設します。2010年まで、JALはハワイ島コナへの直行便を運航していましたが、それを復活。ANAがハワイ・ホノルル線に超大型機のA380を就航させる計画であり、供給座席数を一気に増やしてくるのに対抗する狙いもあります。コナ線はハワイアン航空が一足先に羽田と結んで運航を開始しています。ハワイ路線の競争がますます激しくなりそうです。
機材はボーイング787-8(SS8)、運航スケジュールは以下のようになっています。
JL773 成田 10:30 → メルボルン 21:55
JL774 メルボルン 00:05 → 成田 09:05
シドニー線、メルボルン線は運航スケジュールをずらすことで、オーストラリアへの旅程を組みやすくする狙いがあります。
出典 JALプレスリリース
ハワイ島コナへの運航スケジュールは以下。機材はB767-300ER(SS6)。
JL770 成田 21:25 → コナ 10:15
JL774 コナ 12:15 → 成田 16:00(翌日)
JALのハワイ路線は下図のようなネットワークになります。
出典 JALプレスリリース
オーストラリア、ハワイはテロの影響も少なく、日本からの海外旅行客の増加も見込まれる路線です。そこに資源を集中させる動きでしょう。対して、テロによる影響から乗客数が減少しているフランス・パリ線は10月29日をもって成田発便を廃止、羽田発便に集約させます。イギリスでもテロがあり、ヨーロッパへの観光客数はしばらく復活しないかもしれませんから仕方のないことですが、長距離路線からの撤退はやはり寂しいですね。マイルで取れる特典航空券枠も減りますし。
2017年5月の日経記事では、LCCとの競合激しい韓国路線も減便する予定だそうです。一足早く関空-ソウル線は運休しています。日本のLCCだけではなく、韓国のLCCがこぞって便数を増やしている現状では、価格競争に巻きこまれたくないという動きのようです。
まとめ
JALが経営再建後に初めてフリーハンドとなった路線便数計画ですが、手を広げすぎ、さらに放漫経営に陥ってしまったことの反省から、手堅いものとなりました。確実に収益が見込める路線に集中していく計画はそれを表していますね。いろんな都市へフライトしている方が旅先を考える上では夢があっていいのですが、再び倒産の憂き目にあわないように、堅実に行くことは重要です。
ANAとはよいライバル関係でサービス向上に努めていただきたいですね。
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